贈りものに「添える」 vol.2
【言葉で想いを綴る】

想いを綴る中でもうひとつ大切なこと、
それは「言葉」ですよね。
贈りものに言葉を添えることは、相手にもっと
あなたの気持ちを豊かに届けてくれるひとつの手法。

とはいっても、言葉を考えることはなんだか
ハードルが高くなってしまう人も
多いのではないでしょうか。

そこで、今回は詩というスタイルで
魅力的な言葉を編み続ける詩人・最果タヒさんに
「言葉を贈ること」について、言葉にまつわる
いろいろなお話を聞きました。

最果タヒ|詩人

中原中也賞・現代詩花椿賞などを受賞。
主な詩集に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
『天国と、とてつもない暇』などがある。
最新詩集は『夜景座生まれ』。
詩の展示「われわれはこの距離を守るべく生まれた、
夜のために在る6等星なのです。」
が、名古屋・心斎橋にて巡回予定。

「本当の意味で人と通じ合う、
そのために言葉がある。」

ーまず、たくさんの詩を書いてきた最果さんにとって、言葉の持つ面白さや
パワーってどんなところにあると思いますか?

言葉ってみんなが共有しているものだからこそ、
自分のことを話そうとしても、完全にフィットする言葉がなかったりします。
既存のものに、自分の気持ちを当てはめなくてはいけない気がして、私は言葉が怖いって昔から思っていたんです。

それでも、言葉を使うしかないし、つい喋る言葉に合わせて気持ちを簡略化したり。時には、喋っている言葉の方が本心だと思ってしまったりします。
簡略化するために捨てたものを忘れていってしまうから、言葉にするって本当に難しいなって。

ー捉えようによっては、言葉は難しいものだと。

はい。自分の気持ちそのものをそのまま言葉にすることはとても難しく、そして伝えたいという気持ちが先行するからこそ、伝えるために自分の気持ちの枝葉をつい切り落としてしまう。
でも、そうでないやり方もあるんじゃないかって思ったんです。伝えようとすることを本当の意味で諦めなかったら。
人はそれぞれ別々の人生を生きていて、だから他者と完全には分かり合えない。
でもだからこそ「自分」というものがこの世で唯一のものだと思えます。他者についても、相手を完全に理解できるわけではないんだって、受け入れられたら、それを豊かだと思える瞬間もあると思いました。そのきっかけになる言葉だってあり得るはずだって。

常に伝わりきらないからこそ、惹きつけられる言葉に出合う瞬間があったり、うまく会話は進まなくてもこの時間が続くといいなと思ったり、それが本当の意味で人と通じ合うことであり、言葉の役割なんじゃないかと思います。

ー最果さんはこれまで展示や「詩のホテル」などいろんな詩、ひいては言葉の伝え方にチャレンジされていますよね。
通じ合うという話も出ましたが、
相手に「伝える」際に、なにか意識していることはありますか?

こんなことを伝えたいとか、ここで感動するだろうというゴールを、書き手が設定するのはおこがましいことだと考えていて。そうやって書いたものは伝わらないだろうと思っています。

むしろ、全然伝わらないんじゃないかって不安でいっぱいになりながら、でも出したい、これは出したい、って思うとき、その作品はとても良いんじゃないかって思っています。そういう作品は「みんなこれが好きだろう」と思って書く言葉とは違う届き方をするんです。

だから、私はできるだけ読み手を想像せずに詩を書きます。今回の詩はちょっとやりたい放題だなあ、というときの方が案外好かれたりもして、どう受け止めてもらえるかという未知数の部分を勝手に推し量るのは多分一生できないと思います。そしてだからこそ、書いて、世に出すことは面白いなって感じます。読者に預けるくらいの感覚でいる方が、書いていて私は楽しいんだと思います。

ー預ける感覚は、ふだん私たちが誰かに言葉を綴るときにも大切にしたいですね。
そもそも、最果さんは普段、どのようにして言葉を綴るんですか?

「いい作品を書くぞ」と思っていないときの方が、言葉を書ける気がします。欲がないというか、力が入っていないときの方がいい。だから、スマホが基本です。書斎でワードとか原稿用紙には絶対に書けません(笑)。

事務連絡とかメールとか、誰かに向けて何かを書くのはすごく苦手で、宛名のないものを書く方が好きなんです。

「当たり前の言葉でもいい、
伝えようと思った気持ちが大切。」

ー今はなかなか人に会えない時代になってしまい伝える機会が減ってしまって。
そんなときだからこそ、相手にちゃんと思いを伝えることって、
すごく価値のあることなのかなと感じています。

伝えることも大切ですが、私は、何をどう伝えるかより、伝えたいと思ったときの衝動の方が大事だと思っています。

たとえば「虹が見えて綺麗だから、写真をあの子に送ろう」という感覚が大切で、受け取った側もその感覚を知っているからこそ嬉しくなる。

言葉もそうで、当たり前の「お誕生日おめでとう」という言葉でも、「思い出してくれたんだ」と嬉しくなることがあるし、ふと伝えようと思ったときの衝動や動機にこそ相手には一番価値があると思います。

ー言葉へのハードルが少し下がりますね。
ただ一方で、思いを伝える際にその人にしか書けない言葉を綴りたい人も多いと思うのですが、「自分だけの言葉」って誰にでもあるのでしょうか?

自分だけの言葉は、あると思います。
たとえば、SNSにおける誹謗中傷で、自分自身がどう思っているかあまり考えることもなく、「みんなが投げているから」という理由で自分も石を投げるようなこと。他人の気持ちに乗っかって、みんなの言葉を使って叩いているような場面がよくあります。そこには「自分だけの言葉」はないし、相手のことはもちろんですが、自分のことも軽んじている行為だと思うんです。

だけど、一方で、人に言葉を贈るとき、気持ちを伝えようという動機は自分だけのもの。だから、その気持ちを伝える言葉は、たとえ使い古された言葉であっても、その人だけの言葉になるんだと思います。

ーなるほど。でも、伝えたい気持ちを言葉で表現したくても、
なかなか言葉がしっくりこないときもあるなあと感じます。
自分が伝えたい言葉を探り当てるコツはありますか?

私の場合は、書き始めて一直線にそのまま完成させることが多いです。というか、そうでないと書けないと思います。自分の中にまだ答えがないエッセイとかを書くときも、まず答えが見えないまま書いちゃう。それで、違うなと思ったら「違うな」って、その続きに書く。そこから、なんで違うかを書く。

言葉にするのって大切で、そうやって書いているうちに見えてくるんです。だから、最初からパーフェクトに書こうと思わない方がいい気がします。

手紙にしても、最初から完成したものを贈るんだ!と思いがちですが、相手は自分が書いたのと同じくらいのスピードで読んでいくんですよね。最初から結論を書かなくても「そうか、そうか」って会話するみたいに手紙を読んでくれるし、思ったことをそのまま書き進めても相手はついてきてくれると思います。

「想いを伝えたい人がいる、
それは尊くて素敵なこと。」

ー言葉を綴るという意味では、詩もそのうちのひとつだと思っています。
たとえば、詩を誰かに贈るというのも楽しそうだなと感じました。

詩でも本でも、「あの子に贈りたい」と思うこと、「あの子は好きかもしれない」と考えることは、自分の思いで動いているからこそすごく意味があることだと思います。その二人じゃないと起こり得なかったことですよね。私は誰かに詩を贈ったり、詩集をオススメしたりすることがないので、想像でしかないんですが、、

でも「最果さんの詩集を友達に贈りました」って言ってもらえることも実際にあって。その本がどうかとかじゃなくて、その関係性に価値があるんです。

だって、好きだと思う本とか映画を「見てみて」って他人に言えること自体が素敵じゃないですか。それができる関係性はそれだけで宝物だと思います。

ーたしかに、想いを伝えたいと思える相手がいること自体が素敵ですよね。
伝えることでふたりの関係性も深まるだろうし。

本当に思っていることを伝えようとすること、わかってもらえないかもしれないけど、それさえ踏まえた上で精一杯伝えようとすることって、楽しくおしゃべりをしたり、どこかに一緒に遊びに出かけたり、場としてのバランスを保っていくことに比べたら、受け入れてくれなかったときにバランスが崩れちゃう可能性もあって。
人はなんでも伝え合えるわけじゃないし、分かり合えない部分の方が多い。それさえも受け入れるつもりで、踏み込んでいく行為なのかもしれないです。

それでも、いろんなものを懸けて言う。そういう関わり方は人として素晴らしいことだと思います。

では最後に、一番思い出に残っている
「贈りもの」を教えてください!

なんだろう、これは自分へのプレゼントになっちゃうんですが、小学生のときにお年玉を貯めてクリスマスにモミの木を買ったのが印象に残っています。

プレゼントをするときって、贈る前にはすごく考えるんですけど、贈った後には自分からは手放されているからこそ、案外記憶として残っていなかったりするんですよね。

詩を書いていてもそれは同じで、詩を読めば書いていたときのことを思い出しはしますが、作者として好きな詩というのはなくって。それはなにより読者に読んでもらえることが作品にとって大きな意味を持つから、そこを大事にするために、信頼して手放しているという感覚なのかもしれません。

ポートレート写真:朝岡英輔(Eisuke Asaoka)
「詩のホテル」写真:延原優樹(Yuki Nobuhara)
最果タヒの個展 PARCO MUSEUM TOKYO写真:山城 功也(Koya Yamashiro)

角田貴広|編集・ライター

1991年、大阪生まれ。東京大学大学院中退。
ファッション紙「WWDジャパン」での
メディア運営・編集を経て、フリーランスに。
現在はメディアでの執筆、複数企業の
オウンドメディア運営などに関わるほか、
ホテルベンチャーL&Gにて企画・戦略全般を担当

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