誰とも比べようもないその人だけが持って生まれた
美しさや才能に一人一人が気づいて開花させていく、
そのお手伝いがしたいと思っています。

#わたしのNe

vol.3

青山有紀

「Ne」はルーツ、根っこにある大切なものに
フォーカスをあてるウェブマガジンです。

変化の激しい日々、立ち止まってしまうこともある。
「これからどうしたら良いんだろう?」そんなときには、思い出してみたい。
いつかの私を支えてくれたものは何だったか。いつでもそこへ戻っていくことができる風景はどこにあるのか。
変わりゆく世の中で、私らしさをつくるもの。私の根。私のルーツ。

今回は、京のおばんざいやお菓子を中心に、韓国料理や薬膳料理、インド伝承医学アーユルヴェーダにも精通する料理家・青山有紀さんのNe(根)=ルーツを辿ります。


出会いや別れ、頑張り疲れた過去。
それらを経て気づいた自分だけの心地よさ。
押し寄せる情報の波や社会の変化に惑わされず、自分の内側に耳をすませるために必要なものとは?

「根」があれば、揺らがずにいられる

この1年半、青山さんのなかで大きな変化はありましたか?

私、やりたいことがずっと変わっていないんです。それをどのように表現するか、という出力の方法が状況に応じて変わるだけで。だから、この1年半で特別に何かが変わったという実感はないんですよ。

これまでもさまざまな表現で食について発信してこられましたよね。

そうですね。お店をやったり、本を出したり、料理教室をやったり……今は地元である京都に帰ってきてまた新たな方法を試しているところです。

世の中の状況が大きく変わっても、変わらずにいられたのはなぜでしょう?

それこそ自分の「根」を持っている人は動揺しないんだと思います。やり方を変えるだけで、本質は変わってないわけだからそこにストレスは発生しにくいですよね。自分の内ではなく、外側の社会にばかり目を向けて生活を作っていると、いざその社会が揺らぐと困ってしまいますよね。

最後の食事、なにが食べたい?

青山さんがそんな風に考えるようになった経緯を探っていきたいと思います。まず食に関わるようになったきっかけを教えていただけますか?

私の家はもともと食に関わる仕事をしている人が多かったんです。姉も食に関わる人でした。CAをしていて、文字通り世界を飛び回っていたのですが、あるとき女性の健康を守る食事をつくりたいと言い出して、CAを辞めてお店を出すことになったんです。今でこそ女性のための食事ってよく見かけるコンセプトですが、20年以上前はほとんど前例のない試みでした。私はそんな姉のお店を手伝うため、上京したんです。

では、お姉さんがきっかけだったんですね。

はい。ところがお店をはじめて間もなく姉は病気になり闘病生活の末亡くなってしまいました。私がとてもショックだったのが、あれだけ食にこだわり続けた姉が最後に食べたものが病院のりんごゼリーだったことでした。本当に美味しいもの、たとえば季節の食材を口に含んで「ああ美味しいな」って思えるものを最後の食事にしてほしかった。

その出来事は青山さんに大きな影響を与えたのでしょうか?

そうですね。根源的な体験です。それで、日本の人々の食の底上げがしたいと思って活動をはじめました。これは、みんな食にこだわりを持つべき!とか厳格に食材を制限せよ!ということではなく、「いま、これを食べる」という意識を持つことに対して、自分自身ちゃんと腹落ちするような食の価値観を持つことが自然になればいいなあ、と。その中で、自分が心地よいバランスを取れるようになっていけばいいなあと思っています。

食において自分自身が納得する感覚は持ったことがありませんでした。

でも頑張ってやっているうち、私自身も体調を崩してしまいました。そのときに韓国人である祖父がやっていた薬膳の食養生のことを本気で勉強してみたいなって思うようになったんです。専門の大学に通い薬膳のことを学んで実践するうちに、本を出させていただいたり薬膳講座もさせてもらうようになりました。現在は東京の2軒のお店やテレビや撮影のお仕事など全て辞めて、京都に帰ってきて商品開発や動画制作など新しい業態を楽しんでいます。

ご自身の経験から生まれた価値観なのですね。

食を通して、誰かが自分の心地よさに気づいていく、種に秘められた情報でそれぞれの花が咲くように、誰とも比べようもないその人だけが持って生まれた美しさや才能に一人一人が気づいて開花させていく、そのお手伝いがしたいと思っています。

頑張らない、と決めることで見えてくるもの

青山さんの中で「心地よさ」という言葉がキーワードだと感じます。自分の心地よさに気づく、とはどういう状態なのでしょうか?

頑張らないままでいられる、ということです。誰かの期待に応えようと無理に頑張っている状態にある人は、それを辞めてみることで、本当の自分の心地よさが見えてくるんじゃないかと思います。

私たちには「頑張るべき」「欲しいものは頑張らないと手に入らない」という考え方が染みついてしまっています。学校もそう。みんなそれぞれ違う才能があれば、苦手なことも違うのに、できないことが悪いみたいに教わってしまう。

学校は特に勉強ができる人が評価されやすい環境ですよね。

でも、頑張って手に入れたものしか自分のまわりになかったら、常に「頑張り続けないと全てを失ってしまう」という恐怖感と戦い続けないといけなくなりますよね。

確かにそうですね。頑張り続けなければ、自分に未来はないと思ってしまいがちです。

私自身がむしゃらに頑張っていた頃があったけれど、頑張るのをやめたとき、自分のなかにもともとあった力が湧いてくるのを感じたんです。手放してみてはじめて自分の思い込みにも気づきました。

「頑張らなければできなかったこと」を、まるで玉ねぎの皮を剥くように少しずつ手放していくうち、思いもよらない自分の才能を発見したり、欠点だと思っていたものが見方を変えれば美点だったことに気づくようになりました。

それは仕事に限らず、ですか?

そうです。人付き合いも頑張らないようになりました。

例えばどんな風に?

以前は、人を元気にするために頑張っていたけれど、誰かを元気にすればするほど私自身はすり減っていくのを感じていたんです。でも、そういう頑張らないと維持できないような友人関係を辞めて、お互いが心地よくいられるタイミングでだけ会える友人と付き合うようにすると、本当に波長の合う人たちと出会うことができました。

無理をしてまで人付き合いをしないということですね。

うちで働く女性たちにも心地よく働いてもらうようお願いしています。気分があがらないときや体調が不安定なときは堂々と休んでくださいって。「今日はしんどいけど頑張って仕事に来た」って人が一人でもいると、周囲も頑張らなきゃいけない気がしてくるし、なにより「しんどいな」と思いながら作られた食べ物を売りたくないんです。

自分を認めて、相手を認めて。とても素敵な環境ですね。

前に「へそが痛いから休みます」って言ってきた子もいましたよ(笑)。たぶんお腹を出して寝てたんじゃないかなって思うんだけど。彼女にもしっかり休んでもらいました!

外ではなく、内へ。自分だけの種があることを知ってほしい

頑張ることを辞めて、自分の心地よさにきちんと目を向けることで見えてくる景色があるんですね。

でも、私は頑張るのはダメだとか、体に悪いものを一切食べるなとか言いたいわけじゃないです。全部自分の経験だから。経験に良いも悪いもないし、全てに意味があると思っています。

ただ、いろいろな経験を経て、やっぱり心地よい自分のあり方に気づければいいと思うし、私はそれを食を通してサポートできたら嬉しいなって思うんです。

心地よい自分のあり方に気づけないまま「他の誰か」に目が向いてしまうこともありますよね。たとえば「あのモデルさんがやっていた食事法を私もやってみよう」とか。

人が持っている種というのはそれぞれ全く違うと思うんです。だから、他の人のやり方を真似してもなかなか上手くいかないってときも落ち込まないでほしい。それは当然のことだから。外からの情報だけじゃなく、自分の体と心の内側にも耳を澄ませてほしいです。体に合うなら続ければいいけど、新しい情報を取り入れてからなんだかしんどいなとか便が柔らかいなとか便秘気味だなって感じるならそれは一旦辞めた方が良い。

体調を気にかけることも、自分に耳を澄ますことですよね。青山さんご自身は、心地よく過ごすためのルーティーンやこだわりなどがありますか?

それ、よく聞いていただくんですが、私はないんですよ。むしろルーティーンがない方が自分らしくいられると感じています。毎日これをする!って決めても、体調によってできないときだってありますよね。生理でしんどいとか。そんなときに「できなかった……」っていう罪悪感を持ってしまうほうがよっぽど体に悪い気がしていて。

毎日酵素シロップを飲んだりなつめを食べてるけど、ルーティーンと決めてないから続けられる。だから休んでもいい。そのとき気が合うものを食べたり、身に着けるだけのことなんです。だから、靴下にもあまりこだわりはないんです。その日の自分が心地よいと感じるものを履いています。天然素材のものを選びがちではあるんですが。

本日の撮影場所である鴨川も、青山さんにとって自分らしくいられる場所なんでしょうか?

私はここ、御所と鴨川のあいだのエリアで生まれ育って、荒神橋のあたりでもよく遊んでいました。だから、目に見えないつながりというか、この土地のものを食べると体が喜ぶ感覚はあります。

でも、だからといってずっとここにいるとも限りません。そのときどきで、自分が心地よいと思える場所を選べばいいと思っています。固執しないことが大事です。「ここしかない」って思ってしまうと楽しくないですしね。

頑張り疲れた人たちが、青山さんのように自分だけの心地よさを発見できればいいのにな、と思います。

頑張り慣れてしまった人は、力の抜き方がわからなくなっているんですよね。私もかつて頑張っていたときは、瞑想とかしてみても「無になんてなれないじゃん!」って思っていました。だからいつか「ただただ心地よい」ってことを体験できるような場所をつくれたらなと思っているんです。

最後に、青山さんの「根」を教えていただけますか?

自分という種、あなたという種、どちらも全く違うけれど、だからこそ素晴らしいということへの気づきです。

着用商品

販売開始から25年以上、何度もコスト高騰の波にさらされながらも、販売価格は一度も見直さず、すえ置きのまま。シンプルだからこそ際立つ見た目と履き心地。独自で機械を開発するなど、少しの妥協も許さず改良を続けています。まずは履いてほしい、これぞ、靴下屋の原点ともいえる一足です。

コットンブレンドソックス

Color:18 チャコールモク

¥550

青山 有紀|料理家

京都在住。
国際中医薬膳師、花療法家、本草閣認定マスターヒーラーの資格を持ち、季節の食材を使った酵素シロップなど、体が喜ぶ食品を作っている。

インタビューを読んでくださった方にスペシャルなお知らせ!
記事内で青山有紀さんが着用している「コットンブレンドソックス」をお得に手に入れる15%OFFクーポンをご用意しました。
身も心も緩む、あたたかかな足元と時間が訪れますように。

【キャンペーン期間】
2021年10月1日(金)〜14日(木)


終了しました。

photo:野本敬大、writer:小島杏子、edit:金井塚悠生