「歩道橋の上から」

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自分の足元を何台もの自動車が通り過ぎていく。ぶおーん!ぐるるるる。
大きな音と共に、大きな物体が動いている。小さな点だったものが徐々に近づいてきて、その輪郭を顕にしたと思いきや、瞬間、向こうのほうへ遠ざかっていく景色。歩行者も、自転車も、私という観察者には気がつかないままどこかに行って帰っていく。
歩道橋は、交通量の多い都市部の交差点や、複合商業施設をつなぐ動線としての役割以外では、もはや使用されないまま通り過ぎる存在になっている。60〜70年代にかけて交通事故防止のため盛んに設置されたが、今や高齢化社会へのバリアとなり、景観を阻害するものとなり、劣化による安全性も問題視されている。
「道」という、ある意味では人間社会のど真ん中にいながらも、時に邪魔扱いされる厄介者の身体の上で息を吸って吐く。少しだけ足を止めて風を感じてみる。常時たくさんの人が行き交う中でそこは、誰からも干渉されることのない避難所になる。
時代に取り残された場所から時代を眺める。その哀愁、趣に私は心癒される。
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近藤大輔
1990/静岡県生まれ。ドローイングやスタイロフォーム彫刻を制作。8匹のぬいぐるみたちと生活をしています。
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