「娘の欲望」

娘はいま2歳半。おやつに欲しがったソーセージを冷蔵庫から出して渡すと、咀嚼までしてから「おいしくない」といって吐き出す。外で遊びたいというので支度をして外に出た途端「もうがんばれない」といって抱っこをせがむ。これが大人なら、せっかく咀嚼までしたなら飲み込むし、せっかく準備してもらったなら建前程度には遊ぶだろう。娘の欲望にはそういう「せっかくしてもらったから」という濁りがまるでなく、そこにいつも感動してしまう。「3歳までの子供はほとんど獣ですから」ある保育者の言葉がとても好きでいつも思い出す。社会性を獲得するにつれて自然と隠れていくだろう人間の獣の部分を、こんなに近くでみることができて幸せに思う。



東郷清丸

横浜生まれ。2017年に1st Album「2兆円」、2019年に2nd Album「Q曲」を発表。両作品ともに、若手ミュージシャンのための音楽賞"Apple Vineger Music Award"にノミネート、「Q曲」は審査員特別賞を受賞。
DIYスタジオに演奏家を招聘し一日でミニアルバムを録音・発表した「トーゴーの日2020」や、コロナウイルス感染拡大の影響でイベント中止が相次いだ2021年のゴールデンウィークに、毎日あたらしい歌を公開した「Golden Songs Week」など、音楽をつくる行為そのものを遊ぶ。
開放的な音楽観を活かしてCMや映画・演劇への楽曲提供も多く手掛け、そのほか映像やラジオへの出演も行う。