「髪を切る」

3ヵ月ぶりに美容院に行った。髪型は変えずに毛先を整えてもらうだけにしようと思っていたけれど、信頼している美容師さんのご提案で顔周りの髪だけ短く切ることにし、いざ切ってもらったら、とても似合っていた。私は変化が苦手で、しかも頑固なところがあるから、一旦いいと思ったものに固執してしまうクセがある。でも、こうやって信頼のおける方に前向きなご提案をいただけると、変わってみようかなと思える。他人とは、自分に新しい風を送ってくれる風穴のようなものだ。親しさの度合いにかかわらず、周囲の人とかかわることを大切にしたい。髪型が変わったらきれいな服を着たくなってきた。今度は3ヵ月を待たずに、美容院に行きたい。



「天国」

気分転換をしたくて窓を開けたら気持ちいい風が吹いてきた。コンビニで買った100円のアイスコーヒーがすごくおいしい。毎年忘れてしまうけれど、夕方に半袖で外を歩くとひんやりして気持ちいいくらいのこの季節が大好きだし、この季節を過ごすために生きているのかもとさえ思ってしまうほど。生きている間にあと何回この季節を迎えられるかなぁ。この世に天国があるなら5月のことだと思う。



「わたしの身体へ」

久しぶりに高熱を出して寝込んでしまった。愛猫のみいちゃんが体調を大きく崩していて、ずっとつきっきりで看病していたのだけど、がんばって持ち直してくれてホッとして、途端に気がゆるんだのかもしれない。それ以外にも疲れたりしんどかったりすることが続いていたものの「そんなことくらいで」と思ってしまっている自分がいたから、身体の内側から認めてもらえた気がしてうれしかった。30歳を過ぎてから無理が効かなくなったけど、限界に気づけない鈍感な私の代わりに身体がブレーキをかけてくれているのだと感じる。仕事を思い切って休み、眠ったり本を読んだりしてすっかり快方に向かいつつあるのがわかる。身体よ、ありがとう。



佐々木ののか|文筆家

北海道在住。自分の体験をベースにしたエッセイや、ブックエッセイを新聞や雑誌、webなどに寄稿している。著書に『愛と家族を探して』(亜紀書房)『自分を愛するということ(あるいは幸福について)』(亜紀書房)がある。
Twitter:@sasakinonoka