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微妙な違いは大きな違いである

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「お前、靴下を見分けられるようにならなあかんぞ!」

 

会長は繰り返し私にこうおっしゃられます。タビオは世界一の靴下総合企業を目指しています。したがって、当然、タビオの社員である私は靴下の良し悪しを判断できるようにならなくてはなりません。

靴下の良し悪しもわからずには、「世界一」にも「総合企業」にもなることはできないでしょう。

 

魚の良し悪しが判断できないならば、魚屋さんで世界一にはなることができないでしょう。

野菜の良し悪しが判断できないならば、八百屋さんで世界一になることはできないでしょう。

 

しかし、一般人からみれば魚、野菜の良し悪しを判断することは難しいです。同様に、靴下の良し悪しを判断することは、新入社員の私にとっては難しいです。

 

「見た瞬間にわかるんぞ!」

 

と、会長はおっしゃいます。会長にとっては、人間がそれぞれ違う顔をしているように、靴下もそれぞれ違う「顔」をしているように見えるのでしょう。

 

 

それぞれの靴下の「顔」の違いは微妙なものです。

それぞれの人間の顔の違いも微妙なものです。これは誰もが認めることでしょう。海外旅行の際、「なんだかみんな顔が似ているなあ」と思ったことがある人は多いはずです。

 

それでも、私たちは人間の顔を区別します。違いがわかるのです。だとするならば、靴下の「顔」の違いがいかに微妙であるとしても、靴下の違いがわかるはずです。

 

 

 

ところでタビオの靴下が持つこの「微妙な違い」ですが、いかにそれが「微妙」であるとしても、それは何の効果も無いという意味ではありません。

 

例えば、心理学の分野における研究で次のような事実がわかっています。

 

すなわち、一般的に人々が「美男子」、「美女」と認める人物の顔のパーツに対して微妙な変更を加えた場合、人々はその人物に対する評価を変えます。

 

これは実感にもそうのではないでしょうか。

 

「あれ、前のほうがかわいかったな」と思ったら、実はその人はメイクを変えていた。

「あれ、前のほうがかっこよかったな」と思ったら、実は少し太っていた。

「あれ、前のほうがおいしかったな」と思ったら、実はお米の種類が変わっていた。

 

微妙な違いは、それが何かわかるかわからないかにかかわらず、変化を生むのです。それは白が黒になるような、黒が白になるような、大きくて、瞬時にわかる変化ではないかもしれません。

しかし、その効果は潜在的には大きいのではないでしょうか。

 

 

「他人とは決定的に違ってなんだか格好が良い、しかし他人との違いはわかるかわからないか微妙である」

 

そんな人って、そんなものを選ぶことができる人ってかっこいいですよね。

 

タビオの靴下はそんな靴下なのです。

 

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