目立たせるか、目立たせないか。ソックスの着こなしコーディネート、実践編。

スーツを着るときには、ロングホーズ。着こなしセミナーで、ファッション誌の原稿で、何度もお伝えしてきました。ロングホーズと呼ばれる膝丈のソックスを選ぶのは、寒さしのぎではありません。足を組んだときなどに、すね毛が見えて恥をかいたりしないように。ロングホーズの着用は、ビジネスマンのマナーなのです。私自身も、タイドアップしてきちんとスーツを着用するときに、ロングホーズ以外のソックスを履くことはありません。

では次に、色は何を選ぶべきでしょうか。ビジネスマンから、「ソックスの色はスーツに合わせるべきか、靴に合わせるべきか」とよく質問されます。大原則は「目立たぬこと」ですから、スーツの色に合わせると覚えておけばいいでしょう。グレーのスーツにはグレーのソックス、ネイビーのスーツにはネイビーのソックス。より目立たぬように、ダークグレーやダークネイビーのソックスであればなおよしです。靴の色に合わせるという考え方を提唱する人もいますが、ビジネスで履くべきは黒か茶の靴と決まっていますから、そちらから考えても、ソックスの色は黒かダークグレーかダークブラウンと、選択肢はそれほど変わりません。

写真のような黒と白のグレンチェックのスーツの場合は、どうでしょうか。ダークグレーか黒のソックスを合わせるのが正解です。グレンチェックのスーツは、英国のチャールズ皇太子が王室の結婚式に着用して出席して、いまではエレガントなスーツと考えられています。しかし、本来はカントリーサイドで着用する古典柄でした。それを鑑みると、明るいライトグレーのソックスを合わせてしまうと、一気にカジュアルなイメージになりますので気を付けてください。

次にビジネスマンの基本であるネイビーのスーツ。基本にのっとって、ネイビーのソックスを合わせています。コーディネート全体をネイビーとブラウンの2色に抑えて、ネクタイと靴でブラウンを使っています。仮に、靴の色から考えてダークブラウンのソックスを合わせたとすると、コーディネート全体に占めるブラウンの割合が増えてソフトな印象になり、凛々しさを欠くことになります。

いっぽうで、週末のカジュアルウエアにどういった色柄のソックスを合わせるかは、スーツのときより難しいものです。スーツを着用するビジネスシーンにおいては、「相手にどう見られるか」という観点で着こなしを判断していくのがほとんどですが、週末のオフシーンでは、「自分の気持ちが上がる」といった観点が入ってきます。場合によっては、ソックスだけ「目立つ」ものを選ぶ場合もあるでしょう。

着用商品

9×2リブビジネスロングホーズソックス

¥1,400+税

家族と、あるいは友人とレストランでお食事。そんなときには、週末でもジャケットスタイルがおすすめです。インナーをシャツではなくニットにしたり、コーデュロイ素材のパンツを選んだりすれば、リラックスした雰囲気になります。写真のようなマルチカラーのストライプ柄ソックスを選ぶと、お出かけのウキウキする気持ちが余計に盛り上がりそう。予約しているのが年代物のワインで乾杯するような格式の高いレストランであるならば、同じコーディネートでも違うソックスを選びます。そういった場合には、ベージュのコーデュロイパンツとスエードのブーツの色を考えて、シックなブラウンのソックスが正解となります。

着用商品

マルチボーダーソックス

¥800+税

もっとカジュアルに、ショッピングとかスポーツ観戦とかの週末スタイルの場合はどうでしょうか。カジュアルウエアで失敗するパターンで多いのは、色数をつかいすぎること。赤いニット、ネイビーのパンツ、イエローのブルゾン……、想像するだけで目を覆いたくなります。ウエアの色は二色までに絞って、ソックスに鮮やかな色を使ってみてはいかがでしょうか。写真のコーディネートで言うと、カーキとネイビーに色を絞ったコーディネートに対して、ソックスだけ明るいイエローを挿しています。足元のソックスは見えるボリュームが小さいので、このようにパッと目を引く派手目の色でも構いません。

着用商品

パワーフィット2×2リブソックス

¥1,000+税

スーツの場合もカジュアルの場合も、ソックスが着こなしの一部であるのを忘れないようにしてください。ソックスやネクタイといった小物アイテムは、それだけを見て「これ可愛い!」と購入すると、たいがい失敗します。どんなパンツにどんなシューズにそのソックスを合わせるのか、どんなスーツにどんなシャツにそのネクタイを合わせるのかを考えながら購入するのが基本です。

小物選びは、決して小さからず。ソックスでピリリとコーディネートを引き締められる人こそが、おしゃれと呼ばれるのです。

山本晃弘(やまもとてるひろ)

アエラスタイルマガジン編集長、山本晃弘の画像

服育ジャーナリスト。『アエラスタイルマガジン』エグゼクティブエディター兼WEB編集長。『メンズクラブ』『GQジャパン』」などを経て、2008年に『アエラスタイルマガジン』を創刊。2019年に自らの会社ヤマモトカンパニーを設立し、ファッションに関する編集や執筆のほか、ビジネスマンや就活生にスーツの着こなしを指南する「服育」アドバイザーとしても活動中。著書に『仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。』がある。

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